コラム

福祉美容師になるには?資格取得の流れや必要なスキル、仕事の魅力を解説!
2024.11.26

福祉美容師になるには?資格取得の流れや必要なスキル、仕事の魅力を解説!

「福祉美容師」と聞いたことはありますか?高齢化社会を迎えた日本では、美容サービスを必要とする高齢者や障がいのある方が年々増加しています。しかし、中には通常の美容室に行くことが困難な方も多く、そうした方々の「きれいになりたい」という願いに応えるのが「福祉美容師」なのです。本記事では、福祉美容師という職業の魅力や、必要な資格、実際の仕事内容について詳しくご紹介します。目指している方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

福祉美容師とは?

福祉美容師とは、高齢者や障がいのある方に特化した美容サービスを提供する専門家のことです。通常の美容室では対応が難しい方々に、一人一人の状況や体調に合わせた施術を行います。例えば、寝たきりの方をベッドでカットしたり、車いすに座ったままでシャンプーを行ったりなど、従来の美容技術に加えて、特別な技術や知識が必要となります。

 

また、在宅療養中の方への訪問美容サービスでは、ご自宅での施術となるため、限られたスペースや設備の中で安全かつ快適な施術を行う技術が必要です。また、介護施設における施術では、入居者さま一人一人の健康状態や要望を把握し、施設のスタッフと連携しながらサービスを提供します。

 

施術内容は多岐にわたり、ヘアカットやカラーリングといった基本的な美容施術はもちろん、爪のケアやハンドマッサージなど、お客さまの心身をリフレッシュさせるためのサービスを提供することも多いです。特に、認知症の方や重度の障がいがある方への施術では、コミュニケーション力や臨機応変な対応力が重要となります。

 

福祉美容師の特徴と他の美容師との違い

福祉美容師の最大の特徴は、美容技術のみならず、医療や介護の知識も持ち合わせていることです。お客さまの中には、さまざまな疾患や障がいをお持ちの方がいらっしゃるため、その方の状態を正しく理解し、安全に配慮した施術を行う必要があります。

 

例えば、脳梗塞の後遺症がある方の場合、麻痺の状態や座位保持の時間を考慮しながら施術を進めます。また、認知症の方への施術では、気持ちに寄り添いながら、ゆっくりと丁寧な説明を心掛けることが大切です。このように、福祉美容師には医療・介護の知識を生かしながら、一人一人に合わせたオーダーメイドの施術を提供することが求められます。

 

福祉美容師の資格について

福祉美容師になるためには、まず「美容師免許」または「理容師免許」が必要です。加えて、厚生労働省やNPOが認可した資格を取得します。

 

福祉美容の現場において、資格が重要視される理由は安全性の確保にあります。高齢者や障がいのある方へ施術をする際には、予期せぬ事態が起こる可能性があるため、医療や介護の知識が必須なのです。例えば、車いすからの移乗時の注意点や、緊急時の対応方法など、専門的な知識がないと適切な対応はできません。

 

また、介護施設や病院との連携でも、資格の有無は重要な判断材料となります。施設側としては、入居者さまの安全を第一に考える必要があるため、専門的な資格を持った美容師を求めるのは当然のことと言えるでしょう。

 

福祉美容師の主な資格の種類

福祉美容師の資格として、代表的なものには以下の3つが挙げられます。

 

・訪問福祉理美容士(一般社団法人日本訪問福祉理美容協会)

一般社団法人日本訪問福祉理美容協会(JVBWA)が証明している認定資格です。受験資格は「美容師または理容師の資格を有する者、または厚生労働省が指定する美容師、理容師養成教育機関にて卒業、美容師・理容師試験受験履修単位取得見込み証明が可能な者」と定められています。

 

同協会では、訪問福祉理美容師の研修も行っています。所定の会場で認定資格講義を受講すると、認定資格証明書を得られます。

 

・福祉理美容士(認証NPO法人日本理美容福祉協会)

認証NPO法人日本理美容福祉協会が証明する資格です。介護の基礎知識から訪問美容技術のノウハウまで、幅広く学ぶことができます。福祉理美容士養成講座というカリキュラムを通じて、自宅学習と2日間の実技講習を受けると資格取得となります。

 

・認定福祉美容介護師・理容介護士(特定非営利活動法人医療福祉情報実務能力協会)

特定非営利活動法人医療福祉情報実務能力協会が証明する資格です。同協会が指定する教育機関にて、通信教育および規定日数のスクーリングを行うと、資格取得ができます。

 

福祉美容師資格の取り方

ここからは、福祉美容師資格の一般的な取得方法をご紹介します。

 

資格取得の流れ

福祉理美容士の資格を取得するまでの流れは、まず基礎講座の受講から始まります。講座では、福祉美容に関する基礎知識や技術を学びます。座学では高齢者や障がい者の方々の特性、医療・介護の基礎知識などを学び、実技では特殊なカット技術やポジショニングの方法などを習得することが多いです。

 

資格の多くは、講座を受講することで資格取得となります。自宅学習やオンライン講座を取り入れている場合もありますが、実技に関しては対面での講習が必要なため、完全な自宅取得は難しいのが現状です。

 

受験資格

各団体における受験資格は、以下のとおりです。

 

・訪問福祉理美容士(一般社団法人日本訪問福祉理美容協会(JVBWA)

受講資格:美容師または理容師の国家資格を有する者

※厚生労働省が指定する美容師、理容師養成教育機関にて卒業、美容師・理容師試験受験履修単位取得見込み証明が可能な者も受講可

 

・福祉理美容士(認証NPO法人日本理美容福祉協会)

受講資格:美容師または理容師の国家資格を有する者

 

・認定福祉理美容介護師資格(特定非営利活動法人医療福祉情報実務能力協会)

受講資格:

美容師または理容師の国家資格を有する者

厚生労働省が指定する美容師

理容師養成教育機関にて卒業した者

美容師・理容師試験受験履修単位取得見込み証明が可能な者

 

取得までにかかる期間と費用

資格取得までにかかる期間と費用は、各団体で以下のとおりに定められています。

 

・訪問福祉理美容士(一般社団法人日本訪問福祉理美容協会(JVBWA)

受講期間:1日(10時~16時)

随時開催(詳しい日程は公式サイトのホームページもしくは電話でお問い合わせ)

受講料:25,000円

 

・福祉理美容士(認証NPO法人日本理美容福祉協会)

受講期間:2日間 講義・実技スクーリング

1日目 講義 9:30~17:00

2日目 実技 9:30~17:00

2日間の感想をレポート提出(当日配布)

受講料:27,000円

 

・認定福祉理美容介護師資格(特定非営利活動法人医療福祉情報実務能力協会)

受講期間:

1次課程 協会指定教育機関における通信教育

2次課程 協会指定教育機関における規定日数のスクーリング

※1次課程修了成績、2次課程スクーリング出席率証明による審査 1・2次課程修了後3カ月以内に提出

受講料:10,800円

 

福祉美容師の活躍の場

福祉美容師の活躍の場には、主に以下の3つが挙げられます。

 

介護施設

介護施設における福祉美容師の活動は、入居者さまの生活の質を向上させる重要な役割を担っています。定期的な訪問により、入居者さまの身だしなみを整えるだけでなく、施術を通じたコミュニケーションによって心のケアにも貢献しています。

 

介護施設で施術を行う際は、入居者さま一人一人の状態を把握し、適切なサービスの提供することが大切です。施設のスタッフと密に連携を取り、その日の体調や気分に考慮して施術内容を調整します。また、季節のイベントに合わせた特別なメニューを提供して、入居者さまの生活に彩りを添えています。

 

さらに、施設によっては、入居者さまのQOLの向上に向けた取り組みの一環として、福祉美容師がリハビリテーションと連携したサービスを提供する場合もあります。例えば、手の機能回復訓練を兼ねたネイルケアや、座位保持訓練を兼ねたヘアカットなどを行うと、美容サービスを通じて機能改善にも寄与できるのです。

 

訪問美容

自宅で療養されている方々にとって、訪問美容は貴重なサービスです。通常の美容室に行くことが困難な方でも、自宅という慣れた環境で施術を受けられるため、リラックスした状態でサービスを受けられるでしょう。

 

訪問美容の特徴は、お客さまのご自宅という限られたスペースでの施術となることです。そのため、必要最小限の道具で効率的に施術を行う技術が求められます。また、家族の方との連携も重要で、お客さまの普段の様子や要望を細かく確認しながら、最適なサービスを提供します。

 

在宅で療養中の方は、通常の美容室に通うことが難しい場合も多いため、訪問美容サービスは非常に重要な役割を果たしています。自宅で施術を行うことにより、外出の負担を軽減しつつ、身だしなみをケアできるというメリットがあります。また、家族の方とのコミュニケーションを通じて、お客さまの生活リズムや性格、嗜好性なども把握することで、お客さま一人一人に合ったサービスの提供が可能です。

 

このことから、訪問美容は高齢者や障がいのある方々の生活の質を向上させる重要な手段の一つとして、今後も大きな需要が見込まれます。福祉美容師には、限られた環境でも安全かつ効率的な施術を行う技術、そして家族との密な連携力が求められるのです。

 

病院・福祉施設の提携サロン

最近では、病院や福祉施設内に専用のサロンを設置するケースも増えています。施設内にサロンがあると、入居者さまや入院患者さまは、気軽に美容サービスを受けることができます。また、外出が困難な方でも定期的なケアが可能です。

 

病院や福祉施設内のサロンでは、医療・介護スタッフとの密な連携のもと、リハビリなどの治療と一体となった美容サービスを提供することができます。そのため、福祉美容師には医療的知識と高度な技術力、そして多職種連携のスキルが求められるのです。

 

さらに、季節のイベントに合わせたメニューの提案や、ご利用者さまの嗜好に合わせたオリジナルサービスの企画など、福祉美容師の創造性を発揮できる場面も多数あります。

 

このように、病院や福祉施設内の専用サロンは、入居者さまや患者さまのQOL向上に大きく貢献する重要な役割を担っています。そのため、今後ますます需要が高まっていくとされており、福祉美容師にとっても魅力的な活躍の場の一つといえるでしょう。

 

福祉美容師という選択肢を知ろう

福祉美容師は、美容技術と福祉の知識を併せ持つ専門家として、今後ますます需要が高まるとされています。高齢者や障がいのある方々の「美しくなりたい」という願いに応え、QOLの向上に貢献できる、非常にやりがいのある仕事です。資格取得には一定の時間と費用が必要ですが、取得後はさまざまな場面での活躍が期待できます。また、独立開業や施設との提携など、働き方の選択肢もより広がります。美容師としてのキャリアアップを考えている方や、より専門的なサービスを提供したい方にとって、福祉美容師はきっと魅力的な選択肢となるでしょう。

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